「時の中で、深まり、馴染んでいく。」
この言葉は、khróniosという店を立ち上げる際、最初に浮かんだものでした。目まぐるしく流れていく世の中のスピードに、何か大切なものが置き去りにされているように感じていたのです。トレンドに翻弄されるのではなく、時を重ねていくことでより味わいが増していくモノ。静かに、でも確かに日常に馴染み、使い手の時間と共に育っていくモノ。そういったものと、真摯に向き合える場所をつくりたい、それがkhróniosの出発点でした。
服飾や雑貨が持つ「存在感」に惹かれたのは、ずいぶん昔のことです。手に取ったときの質感や、ふと目に入ったときの佇まい。それらは単なる道具ではなく、その人の「時間」や「気持ち」にまで関わってくる、不思議な力を持っていると思っています。
長年、ものづくりに携わる方々やデザイナーと接するなかで、作り手が時間をかけて形にしたモノには、言葉では説明できない「深さ」があると感じてきました。素材の選び方、縫製の癖、目には見えない熱量。それは「流行」とは少し距離のある世界かもしれませんが、私はそんなモノたちに惹かれ、今も変わらず魅了され続けています。
そうした自分自身の“好き”を軸に立ち上げた、小さなセレクトショップがこの場所です。誰かにとっての「特別」でなくてもいい。けれど、その人の暮らしのなかで、ゆっくりと、静かに、かけがえのない存在になっていくようなモノを選びたいと思っています。
khróniosは、古代ギリシャ語で「長く続く」「持続する」という意味を持つ言葉。この名前には、長く愛され続けるモノづくりへの敬意と、そうしたモノを手に取ってくれる方への願いが込められています。
扱うのは、素材や工程に強いこだわりを持った作り手によるプロダクト。絶対的な信頼感があるブランドや、自分自身が長年愛用してきたもの。そして「時とともに表情が変わるもの」を、何よりも大切にしています。
店の場所は、東京都文京区本郷。戦前に建てられ、今では登録有形文化財に指定されている「さかえビル」の一室です。この場所に惹かれたのも、過ぎてきた時間が静かに息づいているように感じたからでした。建物も、モノも、人の手と時間によって育まれていく。そんな空気感のなかで訪れてくださった方が、自分とモノとの関係に静かに向き合える時間を持っていただけたらと願っています。
khróniosは誰かの「最新」ではなく、あなたにとっての「最愛」を届けるお店です。あなたの時間のなかで、モノと心が深く馴染んでいく、そんな出会いをそっと繋げていけたらと思います。
khrónios 髙橋