記事: Cavalier Meiko Takahashiが届いた日。
Cavalier Meiko Takahashiが届いた日。

khróniosを始める前、服はそんなにやるつもりじゃなかった。
もちろん服は昔から好きだった。でも、服屋さんってたくさんある。
いろいろなお店を見ていると、沢山のブランドをよく見かける。人気があるんだろうし、実際に売れるんだと思う。
ただ、それを本郷のこの場所で、しかもこの狭い店で、おじさんの自分がやってもなあ……と思っていた。
なので最初は、服だけじゃなくて、帽子だったり、眼鏡だったり、ジュエリーだったり、鞄だったり。もう少しいろいろなものがある店を考えていた。 実際、今もそのつもりではいる。
店を始めてから、せっかくだから服も少し置こうと思って、 「khróniosに置くなら何がいいかな」 くらいの感じで探し始めた。本当にそのくらいの軽い感じだった。そうしたら、知らないものがたくさん出てきた。
自分は昔から服が好きだったし、それなりに見てきたつもりだった。でも全然知らなかった。
ちょっと恥ずかしいくらい知らなかった(笑)。有名かどうかではなくて、生地だったり、作り方だったり、作っている人の考え方だったり。
なんでこんなことしてるんだろう、と思うような服もある。もちろん良い意味で。
そういうものを見つけるのが、だんだん面白くなった。
流行っているものを追いかけることには、昔ほど興味がなくなった。というか最近はちょっと照れる(笑)。年齢のせいなのかもしれない。
その代わり、作り手が何を考えているのかとか、なんでこの生地なのかとか、なんでわざわざこんな作り方をしているのかとか。そっちの方が気になる。

そんな感じで店を続けていたら、Cavalier Meiko Takahashiを見つけた。
待っていた実物が店に届いた。包みを開けて、シャツを見た。
「すげー……」 本当に最初はそれだった。生地が良い。 全部手縫いで作られている。
ボタンも、細かいところも、見れば見るほどすごい。でも、そういうことを確認して「だから良い」と思ったわけじゃない。最初に見た時の雰囲気。
なんだろう。 これが本当に言葉にできない。服を売っている人間なんだから、もう少しまともに説明しろよと思うけど(笑)。
でも、すごいものを見た時って、案外そんなものなのかもしれない。「すげー」で終わる。 久しぶりに服を見て、ちょっと感動した。

Cavalier Meiko Takahashiのシャツは、決して気軽に買える価格ではない。
でも、仕入れる時に不思議と「これ売れるかな?」とは思わなかった。自分の店で紹介したかった。 それだけだった。もちろん店なので、売れないと困る。そこは綺麗事を言っても仕方ない。
ただ、これを見た人が、 「これ、いいなあ」 と言ってくれたら、それだけでも結構嬉しいと思う。お客さんが商品を見ながら迷っている時に話したり、何か聞かれて一緒に考えたりする時間が、僕は好きなんだと思う。
新しい商品が届いて、それを店に並べている時間も好きだ。自分が良いと思って見つけてきたものを並べる。誰かが来て、それを見つける。
考えてみたら、やっていることは結構単純だ。
もしCavalier Meiko Takahashiを見たお客さんに、 「素晴らしいけど、この値段がなあ……」 と言われたら、 「そうですよね」 と普通に答えると思う。でも心の中では、 5万円の服を3着買うなら、分割払いでもこれを1着買って、ずっと着るのもいいんじゃない? と思っている(笑)。完全に僕の価値観なので、口には出さない。いや、仲良くなったら言うかもしれない。僕自身も欲しい。絶対に買う。
店を始めて一年。当初思っていたより、服が増えた。これ以上ブランド数をどんどん増やそうとは思っていない。服屋なのか、そうじゃないのか。
それも僕が決めることではなくて、見た人が好きに感じてくれればいいと思っている。
ただ、始める前に想像していた店より、今の店の方が好きだ。まだ100%ではないけど。
Cavalier Meiko Takahashiも、もう少し扱いたい。できれば、khróniosを続けている間はずっと紹介していきたいと思っている。
服をたくさん扱うつもりはなかったのに、店を始めたことで、知らなかった服をたくさん知った。
たぶんこれからも、まだ知らないものがある。 そう考えると、ちょっと楽しみだ。

